「ご飯粒を残すな」「早寝早起き」「うそをついてはいけない」。子どもの頃、ご両親から繰り返し聞かされた言葉が、誰にでもひとつやふたつあるものです。耳にタコができるほど聞いた口ぐせも、大人になってふり返ると、その一言にこめられた思いの深さに気づかされます。
ご両親が繰り返し語ってきた言葉には、その人が大切にしてきた生き方や価値観がそのまま映し出されています。ご両親の口ぐせや教え、座右の銘を聞き、書き留めておく。その楽しみ方と工夫を書きました。
まずは、覚えている口ぐせを挙げてみる
親の言葉をふり返るなら、まずはご自身が覚えている口ぐせを挙げてみるところから始めるのがおすすめです。家族で出し合うと、忘れていた言葉が次々とよみがえります。
「うちの母は、何かというと『もったいない』が口ぐせだった」「父はいつも『人様に迷惑をかけるな』と言っていた」。きょうだいや家族で挙げ合ってみると、「そういえば、こんなことも言っていた」と記憶が連鎖します。食卓でのお小言、玄関先での見送りの一言など、場面とセットで思い出すとより鮮やかによみがえります。
その言葉が生まれた背景を尋ねる
口ぐせを思い出したら、ご本人に、その言葉をなぜ大切にしてきたのかを尋ねてみてください。言葉の背景には、その人の人生の経験が隠れています。
「どうして、いつもそう言っていたの?」と問えば、物のない時代を生きた経験から『もったいない』が口をついて出るようになったこと、祖父母から受け継いだ教えだったことなど、思いがけない由来が語られます。一つの言葉の奥にある物語を知ると、聞き慣れた口ぐせがまったく違う重みをもって響いてきます。
座右の銘や、心の支えにした言葉を聞く
日々の口ぐせだけでなく、ご本人が座右の銘として心の支えにしてきた言葉もぜひ尋ねてみましょう。苦しいときに自分を励ましてきた言葉には、その人の芯が表れます。
日めくりカレンダーの格言、恩師や先輩からかけられた一言、好きな歴史上の人物の言葉。「困ったとき、いつも思い出す言葉はある?」と尋ねると、長年胸に抱いてきた大切な一句が返ってくることがあります。額に入れて飾ってある書や、手帳に書きつけた言葉があれば、それも貴重な手がかりになります。
教えを、暮らしの中の場面で思い出す
親の教えは、抽象的に尋ねるより暮らしの中の具体的な場面とともに思い出すと、より深く心に残ります。どんなときに、その教えを説かれたかをたどってみてください。
お箸の持ち方やあいさつのしつけ、お金の使い方、人との付き合い方。「初めてのお使いのとき、こう言われた」「就職するとき、こんな言葉を贈られた」。人生の節目ごとにかけられた言葉を思い返すと、ご両親がどんな思いで自分を育ててくれたかが改めて胸に迫ってきます。
聞いた言葉を、その人の声のまま書き留める
ご両親から聞いた言葉は、言い回しやなまりまで含めて、その人の声のまま書き留めておくことをおすすめします。同じ意味でも、その人ならではの言い方にこそ人柄がにじむからです。
手帳に書きつけても、ご本人の了解を得て録音してもかまいません。書きためた言葉は、お子さんやお孫さんへ受け継ぐ家族の道しるべになります。当社の『想い伝』は、人生を振り返る問いに沿って答えを書き進めるだけで一冊にまとまるサービスで、大切な言葉を語り口そのままに残す手助けになります。何から書き留めればよいか迷うときの入口として、お役立てください。
ご両親の口ぐせや教え、座右の銘は、その人が一生をかけて見つけてきた生き方の結晶のような言葉です。繰り返し語られたからこそ心に刻まれた一言は、ご本人がこの世を去ったあとも家族の中で生き続けます。
次にご両親と過ごすとき、「いつも言っていたあの言葉、どういう意味だったの?」と尋ねてみてください。聞き慣れた口ぐせの奥から、これまで知らなかったご両親の人生が静かに姿を現すはずです。その言葉を書き留めておくことが何よりの贈り物になります。