質屋ののれんをくぐり、時計や着物を預けてお金を都合した経験は、昭和の暮らしにしっかり根づいていました。三の質、七の蔵などと語呂を合わせて呼ばれ、月末やお盆前になると人の出入りが増えたものです。
古道具屋の薄暗い店先で掘り出し物を見つけたときの高鳴りも、多くの方の記憶に残っているはずです。物を融通し合う仕組みは、質屋や古道具屋から、今のフリマアプリやリサイクルショップへと姿を変えました。昔と今をくらべながら、懐かしい情景を思い出してみましょう。
質屋に預ける/フリマで現金化する
かつては給料日前に懐が寂しくなると、腕時計やカメラ、晴れ着などを風呂敷に包んで質屋へ運びました。番頭さんが品を検分し、貸せる金額を告げる。期限までにお金を返せば品は戻り、返せなければ質流れになる。そんな独特の緊張と人情がありました。
今はスマートフォンで写真を撮り、値段をつけて出品すれば、早ければその日のうちに買い手がつきます。預けて後で返してもらうのではなく、思い切って手放して現金にするという発想へと変わりました。押し入れに眠っていた品が、誰かの役に立ちながらお金に換わるのです。
店先で探す/検索して見つける
骨董市や露店、路地裏の古道具屋には、火鉢や桐箪笥、瀬戸物、レコードなどが所狭しと積まれ、埃をかぶった山の中からお宝を見つけ出すのが醍醐味でした。
今はリサイクルショップの整然とした棚や、ネットの中古サイトで、欲しい品名を入れれば全国の在庫が写真付きで表示されます。足を棒にして歩き回らずとも、条件を絞って探せる手軽さがあります。とはいえ、思いがけない一品との出会いという楽しみは、昔も今も変わらず人を惹きつけます。
店主と値段を相談/画面で見くらべる
古道具屋では「これ、なんぼ?」と声をかけ、少し高いなと思えば「もう少しまからんか」と粘る。店主も客の顔なじみ具合を見ながら、渋い顔をしたり、おまけをつけたり。売り買いは会話とかけひきの場でもありました。
今は複数の出品を横に並べ、送料込みでいくらか、状態はどうかを見くらべて、納得のいく一つを選びます。値切りの代わりに「お値下げできますか」とメッセージで尋ねることもできます。顔は見えなくても、やり取りの丁寧さに人柄がにじむのは、昔の店先と通じるところがあるのかもしれません。
近所の店/全国の相手
質屋も古道具屋も、歩いて行ける範囲の顔なじみの店が基本でした。扱う品も土地柄が出て、その町ならではの品ぞろえがあったものです。遠くの珍しい品は、旅先や縁日でめぐり合うくらいでした。
今は北海道の出品者から沖縄の買い手へと、宅配便に乗って品物が行き交います。地元では見かけない品も、探せば全国のどこかで見つかります。売る側も、近所では欲しがる人がいなかった品を、遠くの必要としている人へ届けられるようになりました。物のめぐる範囲が、ぐっと広がったのです。
直して使い回す/リユースが見直される
下駄の鼻緒をすげ替え、傘を張り替え、鍋の底を打ち直す。物は簡単には捨てず、直しながら次の人へ渡していくのが暮らしの習わしでした。古道具屋はその橋渡しをする場でもありました。
今はまだ使える物を捨てずに次の人へ渡すことが、環境にやさしい暮らし方として広く語られています。フリマアプリで手放すのも、リサイクルショップに持ち込むのも、物を大切に回していく点では昔と同じ心持ちです。新しい言葉で呼ばれてはいても、根っこにある「もったいない」の気持ちは変わりません。
現金の手渡し/スマホ決済
質屋でも古道具屋でも、財布から札や小銭を出して手渡し、品を受け取る。お金の重みが手のひらに残る、確かなやり取りでした。釣り銭のやり取りにも、店の人との短い会話がありました。
今はアプリの中で代金が動き、品物が届いたのを確認してから、売り手にお金が渡る仕組みになっています。現金を持ち歩かなくても、画面の操作だけで取引が完了します。手渡しの温もりは薄れたぶん、遠くの相手とも安心してやり取りできる仕組みが、それを支えているのです。
質屋の暖簾や古道具屋の店先、そしてフリマアプリの画面。姿は変わっても、物を融通し合い、次の人へ手渡していく営みは、昔も今も続いています。ご家族で、昔どんな品を質屋に預けたか、掘り出し物を見つけた話などを、お茶を飲みながら語り合ってみてはいかがでしょうか。懐かしい思い出話が、あたたかいひとときを運んでくれるはずです。