蝉の声が響く暑い日、瓶の口をぐっと押し込むと「シュワッ」と音がして、中のビー玉がころんと落ちる。あの一瞬のときめきを覚えていらっしゃる方も多いはずです。ラムネのさわやかな甘さと、かき氷の冷たさは、日本の夏を代表するおやつでした。
今もラムネやかき氷は夏になると店先に並びますが、その姿かたちや味わい方はずいぶんと変わりました。昔の夏のおやつと今のおやつを並べてみると、懐かしい情景がいくつも浮かんできます。ご家族と一緒に、あのころの夏を思い出してみましょう。
ラムネの瓶とビー玉
あの独特の瓶は、口の部分にビー玉がはまっていて、付属の押し具でぐっと押し込むと栓が開く仕組みでした。押した瞬間に泡が勢いよく吹き上がり、慌てて口をつけたものです。飲み終わったあと、瓶の中でカラカラと鳴るビー玉を取り出そうと、みんなで格闘した思い出もあります。
今はキャップをひねるだけで手軽に飲めますが、あの「シュワッ」という音と手ごたえは、瓶ならではの楽しみでした。
店先で削るかき氷
「氷」と書かれた赤い旗が店先で揺れているのが、夏の合図でした。手回しやペダル式の機械に大きな氷をのせ、ハンドルをぐるぐる回すと、ふわふわの氷がお皿に山盛りになっていきます。シャリシャリと削れる音を聞きながら順番を待つのも、楽しみのひとつでした。
今は冷凍庫から取り出してすぐ食べられる手軽さがありますが、削りたてのやわらかな口どけには、また格別の趣がありました。
シロップの色と味
赤いイチゴ、緑のメロン、黄色いレモン。どれも同じような味だと言われても、あの鮮やかな色を見るとどれにしようか迷ったものです。食べ終わると舌が赤や緑に染まって、友達と見せ合って笑ったりもしました。
今は抹茶と小豆の宇治金時や、旬の果物をたっぷりのせた華やかなかき氷も人気です。昔ながらの三色シロップの素朴な味を、今も懐かしく感じる方は多いことでしょう。
食べる場所と季節感
夕暮れの縁側で、うちわを片手にかき氷をほおばる。店先の縁台に腰かけて、近所の人と世間話をしながら食べる。かき氷やラムネは、暑い盛りの限られた季節にだけ味わえる特別なおやつでした。だからこそ、その一杯が待ち遠しかったのです。
今は一年を通して冷凍のデザートを買い置きできるので、季節を選ばず楽しめます。便利になった一方で、夏だけの楽しみだったあのころのわくわく感も、心に残っています。
作り手と買い方
駄菓子屋さんや氷屋さん、甘味処のおばちゃんが、慣れた手つきでかき氷を削り、シロップをたっぷりかけてくれました。「今日は暑いねえ」なんて言葉を交わしながら受け取る一杯には、味だけでない温かさがありました。
今は画面をいくつか押すだけで、冷たいデザートが玄関まで届く時代です。手軽さは大きく進みましたが、顔を合わせて受け取ったあの一杯のやりとりも、懐かしい夏の風景のひとつです。
器とうつわの移り変わり
かき氷は薄いガラスのお皿に盛られ、そのひんやりとした手ざわりも涼を感じさせてくれました。ラムネの瓶は飲み終わると店に返し、また使われるのが当たり前でした。器を洗って何度も使う、そんな暮らしが自然だったのです。
今は紙やプラスチックのカップで手軽に食べられ、後片づけもいりません。便利さと引き換えに姿を消した、ガラスの器の透きとおった涼しさを、ふと思い出すこともあります。
ラムネの瓶を開ける音、かき氷を削る音、舌を染めた三色のシロップ。夏のおやつをめぐる思い出は、あのころの暑さや、一緒に食べた人の顔まで一緒に連れてきてくれます。今年の夏はご家族で、「昔はどんな味が好きだった?」「縁側で食べたねえ」と、思い出話に花を咲かせてみてはいかがでしょうか。世代をこえて交わす夏の記憶は、きっと楽しいひとときになるはずです。