給食の時間になると、教室いっぱいにパンとミルクのにおいが広がりました。アルマイトの食器がふれあうカチャカチャという音、当番さんが大きなやかんからミルクをそそぐ様子、そして「いただきます」の元気なかけ声。学校給食は、世代をこえて多くの人が同じ情景を思い出せる、とてもめずらしい共通の記憶ではないでしょうか。
コッペパンをちぎって食べた人、脱脂粉乳の味に顔をしかめた人、くじらの竜田揚げをおかわりした人。育った時代や地域によって思い出はさまざまです。ここでは、昔の給食と今の給食をやさしくくらべながら、あのなつかしい時間を少しずつたどっていきます。
主食 コッペパンと米飯給食
こんがりと焼けた大きなコッペパンが一人ひとりに配られ、まん中を割ってマーガリンやジャムをはさんだり、そのままちぎって食べたりしました。少しかたくなったパンを、ミルクにひたして食べた思い出のある方もいるでしょう。
今は炊きたてのごはんが出る日がぐんと増え、カレーライスや炊き込みごはん、丼ものなど和食の献立も豊かになりました。うどんやラーメン風の汁めん、スパゲッティが出る日もあり、主食の顔ぶれはずいぶんにぎやかになっています。コッペパンも、今では特別な人気メニューとして登場することがあります。
飲みもの 脱脂粉乳から牛乳へ
脱脂粉乳は、大きなアルミのやかんから当番さんがついで回り、少し独特の風味とにおいがありました。得意ではなかったという声も多い一方で、寒い日の温かい一杯をなつかしむ方もいます。
やがて瓶に入った牛乳が登場し、フタを開ける小さな道具や、ストローをさす紙パックへと移り変わっていきました。今では地元の牧場の牛乳を出す学校や、季節に合わせて飲みものをかえる地域もあります。同じ「給食のミルク」でも、時代によってずいぶん姿がちがうのですね。
おかず くじらの竜田揚げと郷土料理
しょうゆやしょうがで下味をつけて揚げたくじらは、しっかりとした歯ごたえで、おかわりをめぐってジャンケンをしたという思い出話もよく聞かれます。ソフトめんやクリームシチューと並んで、食卓の主役でした。
今の給食には、地元でとれた野菜を使った料理や、その土地に伝わる郷土料理が登場します。季節の行事に合わせた献立や、世界の国々の料理をとり入れる日もあり、食べながら地域や文化を知る楽しみが広がりました。おかずのバリエーションは、昔よりもずっと豊かになっています。
食器 アルマイトと先割れスプーン
アルミでできた軽い食器は、少し熱いものを入れると持つ手が熱かったこと、重ねるとカチャカチャ鳴ったことを覚えている方も多いでしょう。先が割れてフォークのようにも使えるスプーン一本で、ごはんもおかずも食べました。
今は、あたたかみのある磁器の食器や、割れにくい素材の器を使う学校が増えています。おはしの使い方を学べるように、箸を取り入れる地域も広がりました。食器の手ざわりや重みが変わると、同じ給食でも食卓の印象がずいぶんちがって感じられます。
献立 みんな同じから選べる給食へ
かつては苦手なものでも時間いっぱいがんばって食べた思い出があり、それはそれで一つの体験として語りぐさになっています。全員が同じお盆を前にする一体感も、あの時代らしい光景でした。
今は一人ひとりの体質に合わせて材料をかえる対応が進み、みんなが安心して食べられるよう工夫されています。主菜やデザートを選べる日を設ける学校もあり、食の楽しみ方が広がりました。時代に合わせて、より多くの子が笑顔になれる給食へと変わってきています。
配膳 白衣の給食当番
白い上っぱりに三角巾やマスクをつけ、大きな食缶を教室まで運んだこと、おたまでおかずをよそう手つきに気を配ったことは、多くの人に共通する思い出です。当番の日はちょっぴり誇らしい気持ちになったものです。
今も、清潔な白衣に身を包んだ当番さんがワゴンを押して配膳する姿は変わりません。配り方や衛生の工夫はより丁寧になりましたが、「みんなのために準備する」という給食当番の役割は、昔から今へと大切に受けつがれています。世代をこえて共有できる、あたたかな光景です。
同じ「学校給食」でも、育った時代や地域によって思い出す味や情景はさまざまです。コッペパンにミルク、くじらの竜田揚げ、アルマイトの食器。あなたのいちばん好きだった給食は何だったでしょうか。
ご家族やお孫さんと、それぞれの時代の給食を出し合ってみると、思いがけない話に花が咲くかもしれません。今日の食卓での、あたたかなおしゃべりのきっかけになればうれしいです。