夕暮れどきに神社の鳥居をくぐると、参道の両側にずらりと並んだ屋台。赤い提灯が揺れ、綿あめの甘い匂いと、焼きそばのソースの香りが入り混じって鼻をくすぐります。浴衣の袖を気にしながら、下駄の音を鳴らして歩いた縁日は、夏の夜の特別な思い出です。
今もお祭りやイベントの季節になると、屋台がずらりと立ち並んでにぎわいます。変わったところもあれば、昔のままのところもある。祭りの屋台をめぐる楽しみの昔と今を、ゆっくり振り返ってみましょう。
射的や金魚すくいの屋台
コルクの弾を込めて狙う射的では、棚に並んだお菓子やおもちゃを落とそうと、みんな真剣な顔つきになりました。金魚すくいでは、薄い紙を張ったポイを片手に、水の中を泳ぐ金魚を追いかけたものです。破れないように、と息をつめた時間が懐かしく思い出されます。
すくった金魚を袋に入れて持ち帰り、家の金魚鉢で飼った方も多いはずです。射的や金魚すくいの屋台は、今もお祭りやイベントの屋台街で変わらず親しまれています。
綿あめとりんご飴
ざらめが機械の中でくるくると回り、割り箸に巻き取られてふわりと大きくふくらむ綿あめ。真っ赤に照りかがやくりんご飴に、あんず飴やべっこう飴も屋台の楽しみでした。
今では焼きそばやたこ焼きに加えて、その土地ならではの名物料理や、ケバブ、タピオカドリンクといった海外の味まで並びます。屋台のおやつを選ぶ楽しみは、昔も今も変わりません。
お金の払い方
折りたたんだお札や小銭を巾着や財布に入れて、どの屋台で何を買おうかと、残ったお金とにらめっこ。あと一回で使い切ってしまう、という緊張感も縁日の醍醐味でした。
近ごろはスマートフォンやカードをかざすだけで支払える屋台も見かけるようになり、小銭を数えなくてもよくなった場面もあります。それでも、財布から出したお札で釣り銭を受け取るやりとりには、昔ながらの温かさがありますね。
提灯とイルミネーション
赤い提灯がずらりと連なり、裸電球がぼんやりと屋台を照らす光景は、夏の夜の風物詩でした。虫が電球のまわりを飛び交い、その下で店主が威勢よく品物を並べていたものです。
今のお祭りやイベントでは、明るいLEDの照明や、色とりどりに輝くイルミネーションが会場を包みます。明かりの様子は移り変わっても、夜のにぎわいを照らす光には、心を浮き立たせる力があります。
お祭りの探し方
夏になると、氏神さまの祭りや盆踊りの日を心待ちにして、回覧板やポスターで日取りを確かめました。町内に張り出された案内を見て、家族で予定を立てたものです。
今では住んでいる町だけでなく、少し離れた土地の花火大会やお祭りの情報も、手元の画面で調べられるようになりました。行ってみたいお祭りを見つけて、出かける計画を立てるのも新しい楽しみ方です。
お祭りの知らせ方
「いらっしゃい、安いよ」と威勢のよい掛け声が響き、その声につられて屋台の前に足を止めたものです。売り手と買い手のやりとりそのものが、縁日の楽しさでした。
今ではお祭りの主催者やお店が、インターネット上の投稿で開催日や出店の様子を知らせ、それを見た人が集まってくることも増えています。伝え方は変わっても、にぎわいを分かち合いたいという気持ちは、昔から続いているのですね。
夏の夜に見上げた提灯、すくった金魚、握りしめた小銭。縁日の思い出は、人それぞれに色鮮やかに残っているものです。行った祭りの名前、買った屋台の食べ物、一緒に歩いた人のこと。ぜひご家族やお孫さんと、「あのころの縁日はね」と昔話に花を咲かせてみてください。今のお祭りに出かけて、昔と今のちがいを見つけながら歩くのも、きっと楽しい時間になります。