学校が終わると、ポケットの中で十円玉や五十円玉を鳴らしながら、まっすぐ駄菓子屋へ向かった。そんな日々を覚えている方も多いはずです。ガラスのケースに並んだ色とりどりの駄菓子、奥に座っているおばちゃん、店先でわいわい集まる友だち。あの小さなお店は、子どもにとって宝箱のような場所でした。
今、子どもたちがおやつを買うのは、明るくて広いコンビニやスーパーが多くなりました。買い方も、お店の雰囲気もずいぶん変わったものです。おやつの買い方の「昔」と「今」を並べながら、なつかしいお店の風景を思い出してみたいと思います。お茶でも飲みながら、ご家族でゆっくりお読みください。
おやつを買う場所=近所の駄菓子屋からコンビニ・スーパーへ
ちょっと路地を入ったところや、神社のそば、学校の通学路に、小さな駄菓子屋がありました。間口の狭い店先に、ぶら下がったすもも漬けや、ガムやあめの入った箱が所せましと並び、子どもたちが代わるがわるのぞき込んだものです。歩いて行ける距離に、自分たちだけのお店があるという感覚が、なんとも心強いものでした。
今、その役目を担っているのはコンビニやスーパーです。広い通路にずらりと並んだお菓子の棚から好きなものを選び、レジへ運ぶ。品ぞろえは比べものにならないほど豊富になりましたが、「あの角の駄菓子屋」という、町に一つだけの特別な場所の感覚は、少し遠くなりました。
お店の人とのやりとり=おばちゃんの顔なじみからセルフレジへ
駄菓子屋といえば、奥のほうに座っているおばちゃん(おじいちゃんのこともありました)の存在が欠かせません。「いくら持ってきたの」「これとこれでちょうどだよ」とおまけしてくれたり、「気をつけて帰りな」と声をかけてくれたり。常連になると名前まで覚えてもらえて、ちょっとした世間話をするのも楽しみの一つでした。
今のコンビニやスーパーでは、レジの方とのやりとりは手早く済み、自分で会計を済ませるセルフレジも広がっています。並ばずに買えて便利な一方で、お店の人と顔を合わせて言葉を交わす機会は昔より少なくなりました。あのおばちゃんの一言が、今思えばあたたかかったと感じる方もいるでしょう。
お金の払い方=十円玉を握りしめてからキャッシュレスへ
少ないおこづかいを手のひらにのせて、「これを買ったら、あといくら残るかな」と一生けんめい計算したものです。十円のあめ、五円のくじ、二十円のスナック。限られたお金の中で何をどう組み合わせるか考える時間こそが、駄菓子屋の醍醐味でした。お釣りの小銭をにぎって帰る、あの感触を覚えている方もいるはずです。
今は、現金はもちろん、カードやスマートフォンをかざして支払うキャッシュレスも当たり前になりました。小銭を数える手間がなく、すばやく支払えます。便利になった分、硬貨を一枚ずつ確かめながら買い物をする、あの真剣な時間はなつかしい思い出になりつつあります。
選ぶ楽しみ=くじ引きやおまけから次々並ぶ新商品へ
駄菓子屋の壁には、しばしばくじ引きの台紙が貼られていました。一回引くたびにドキドキして、当たりが出れば大きなお菓子やおもちゃがもらえる。あのワクワク感は格別でした。おまけのシールや小さなおもちゃが付いたお菓子も人気で、中身よりおまけがほしくて買った、という方も少なくないはずです。
今のコンビニやスーパーでは、季節ごと、週ごとに新しいお菓子が次々と棚に並びます。話題の新商品をいち早く見つける楽しみがあり、種類の多さには目を見はるばかりです。当てるか当たらないかというくじのドキドキとはまた違う、「次は何が出るかな」という新鮮な楽しさが、今のおやつ選びにはあります。
お店という場所=子どもの待ち合わせ場所から持ち帰りへ
駄菓子屋は、ただおやつを買う場所ではありませんでした。店先や軒下に集まって、買ったお菓子をその場で食べ、めんこやベーゴマで遊び、明日の約束をする。子どもたちの社交場であり、待ち合わせ場所でもあったのです。お店の前のベンチや段差に腰かけて過ごした時間は、放課後の大切なひとときでした。
今は、コンビニで買ったおやつを家や公園に持ち帰って楽しむことが多くなりました。お店の前でみんなが顔をそろえる、という光景は少なくなったように思います。あの店先に響いていた子どもたちの笑い声を思い出すと、なんとも言えないなつかしさがこみ上げてきます。
開いている時間=決まった時間だけから二十四時間へ
駄菓子屋は、おばちゃんの暮らしに合わせて開け閉めされていました。学校帰りの時間に合わせて開いていて、夕方になると暖簾をしまう。日によってはお休みのこともあり、「今日は閉まってる」とがっかりして帰った経験のある方もいるでしょう。だからこそ、開いている時間にたどり着けたときの安心感もありました。
今のコンビニは、夜でも早朝でも、いつでも明かりがついています。思い立ったときにいつでもおやつを買える便利さは、昔では考えられなかったことです。ただ、「開いている時間に間に合うように急いで走った」あの気持ちは、決まった時間しか開いていなかったからこそ味わえた特別な思い出です。
おやつの買い方ひとつとっても、昔と今ではこれほど変わったのですね。便利になったことはたくさんありますが、十円玉を握って走った道のり、おばちゃんの笑顔、店先に集まった友だちの顔は、いつまでも色あせない宝物です。
今日はぜひ、ご家族やお友だちと「うちの近くの駄菓子屋はこうだった」「くじでこんな当たりが出た」と、思い出話に花を咲かせてみてください。世代によって覚えているお店やお菓子は違うかもしれません。その違いを語り合うこと自体が、なによりも楽しいひとときになるはずです。
おこづかいを握って通った日々の思い出は、ご家族にとってかけがえのないものです。語り合ったお話をノートや一冊の記録に書きとめておくと、その頃の暮らしを、次の世代へとそのまま手渡していけます。